ここはパラレルワールドの世界。そのとある家に住む発明家、蒲谷豪太はパラレルワールドの世界が見られるソフトを使ってパラレルワールドの世界を見ていた。
「今日も平和だな。」
そうつぶやいた時豪太は異変を感じた。
「むむっ、あの世界の少年が危ない。」
豪太はそう言うと部屋を離れ、誰かを呼んだ。

「何?父さん。」
呼ばれたのは蒲谷家の長女エレナだった。
「今パラレルワールドの世界を見ていたら一人の少年が危ない事になってる。そこでだ、エレナ、この少年の所に行って彼を助けてやってくれ。」
「うん、分かった。」
エレナはそう言うと鏡の中に飛び込んだ。

一方我々が住むこちらの世界では中学生の少年、蒲谷雷慈が意気消沈しながら家に帰って来た。
「ただいま。」
「おかえり雷慈、今日も辛そうだねぇ。」
母親が出迎えると雷慈はいつものように自室に入った。

「本当俺ってついてないよなぁ。」
雷慈が鏡の前でつぶやいた時だった。

ピカッ

突然鏡が光りだした。
「わあっ、眩しっ。」
雷慈を写していた鏡は眩い光に包まれた。
「何が起きたんだ?」
雷慈は突然の出来事に唖然とした。

その後光が消えるとそこにはポニーテールのピンクの髪を青いうさ耳リボンで纏め、青色の上下服(ジャケットを羽織り、中に白シャツとプリーツスカート)を組み合わせた姿の少女がいたのだった。
「君は誰?どうしてここに?」
「私はエレナ。パラレルワールドの地球にある雷慈の家から来たの。聞いた所によると雷慈は昔から不幸続きで今後も不幸が続くとやがて雷慈は死んでしまうかもしれないわ。だから雷慈の未来を良くするためにも君の家に来たの」

事情を聞いた雷慈は自分の運命に驚くが、
「でも何で俺の所に?パラレルワールドなら他にもたくさんあるはずなのに?」
雷慈の質問にエレナはこう返した。
「実は私と同年代の家族は雷慈しかいないの。私のいる世界ではパラレルワールドの全世界を見る事が出来てその中で唯一の同年代の君が危ない事を知ってここに来たの。」
エレナの言葉に雷慈は一瞬戸惑いを見せつつもこう言った。
「俺を助けてくれるのは嬉しいよ。でも見ず知らずの人が勝手に部屋に入るとまずいんじゃないかな?」
「え〜、私は雷慈のこれからを思って来たのに!じゃあ明日死んでもいいなら私帰るよっ!!」
雷慈の言葉にムッと来たのかエレナは鏡の中に戻ろうとするが、エレナの言葉に焦った雷慈は彼女を引き止める。

「ゴメン、悪かったって。俺の事を思ってくれるのは凄く嬉しいから。どうすれば許してくれる?」
雷慈の言葉にエレナはこう答えた。
「私を抱きしめて。」
エレナの要求に慌てる雷慈だが、
「なーんだ。やっぱりやってくれないのね。じゃあもうどうなっても知らないから!」
エレナの態度に雷慈は慌てる。
「わっ分かったから。今やるから。」
雷慈は慌てながらもエレナを再び抱きしめた。雷慈は生まれて初めての経験に
(こんな事初めてだよ。こんな経験二度とないかも。)
雷慈は内心そう思った。一方エレナも
(男子の温もりってこんなにも暖かいのね。)
部屋は甘い雰囲気で溢れていた。

しかしそれも束の間で今度は階段を上がって来る音が聞こえて来る。
「まずい、親が入って来る!少しだけ隠れて。」
エレナは隙間に隠れる。そして部屋には親が揃って入って来ると父はこう聞いた。
「今女の子の声が聞こえたけど誰か来てるのか?」
雷慈は冷や汗が止まらない程焦った。
(まずい、どうしよう。エレナの事話しても絶対信じてもらえないよ。)
何もないと感じたのか父母は部屋を出ようとしたその時だった。

ズッデーン!!

後ろで転ぶ音が聞こえたので振り返るとそこには転倒したエレナがいた。

雷慈とエレナは事の経緯を話した。
「うーんにわかに信じがたい話だがなぁ。」
「でも雷慈の将来がかかってるみたいだし、今日から雷慈の事よろしくね。」
父母は困惑しながらもエレナを迎え入れた。

その日の夜、雷慈が風呂に入ろうとすると
「雷慈、私も一緒に入っていい?」
何とエレナは雷慈と一緒に入りたいと言うのだ。エレナの言葉にはさすがに親も止めるだろうと思った。すると
「一緒に入っていいぞ。ウチの風呂は広いから。」

親の承諾もあって二人は一緒に風呂に入る事となった。

「なぁ、エレナの住む世界はどんな風になっているの?」
雷慈はエレナの世界を聞いてみた。
「私の住む世界は雷慈の世界とあまり変わらないよ。でも一つだけ違う所があるの。それはね、私のいる世界では鏡の中に入る事でパラレルワールドの世界を自由に行き来する事が出来るのよ。それと私の父は発明家で父が改造した私のスマホを操作すると変身する事が出来るの。でもパラレルワールドの世界では雷慈以外の人には知られてはいけないの。」
「それは何で?ばれるとどうなっちゃうの?」
「バレてしまうとパラレルワールドの力を悪用される危険性があるの。もし悪用されたら大変な事になるわ。あっ、そうだ!今日は私が雷慈の全身洗ってあげるよ。」

突然の爆弾発言に驚く雷慈。
「えっ、いいの?何か悪いなぁ。」
「いいのいいのっ。雷慈のためだから。」
「じゃあ洗い終わったら今度は俺がエレナの体を洗ってあげるよ。」
「いいけど変な事考えないでよ。」

その後、寝室で眠りにつく時も話は続いて
「エレナって家族何人いるの?」
「父と母と私と妹の4人よ。」
「パラレルワールドの世界に行くきっかけとなった事は?」
「私の家では全てのパラレルワールドの世界を見る事が出来て、そしたら雷慈が危ない事を知った父の勧めでここに来たの。ってさっきも話したよね?」
「そうだっけ?」

こうして夜はふけていった。

そして数日後

エレナは雷慈が通う中学校「杉田学園」に転校した。エレナが杉田学園(ここ)に来てから雷慈の日常も少しは変わりつつあった。

「雷慈の奴エレナが来てからすっかり明るくなったよな。」
そう話すのは雷慈のクラスメイトの亀有和也。
「そうだな。雷慈にこんなかわいい親戚がいたなんて初めて聞いたよ。もっと早く紹介して欲しかったぜ。」
和也の友人の中崎真司もそう頷いた。

下校も4人一緒でするようになり、雷慈はすっかり明るくなっていった。しかしそんなある日事件は起きた。

いつものように下校してる時だった。4人で喋りながら歩いていると

ブオー

ドゴォッ

「グアァ!!」

「和也!真司!」

何と和也と真司がバイクに乗った通り魔に襲われたのだ。いずれも鎌で斬られたのか全身から大量に出血を起こしている。
「どうすんだよ!?」
「こんな時はこれしかない。」
エレナはそう言うとスマホを取り出した。

「パラレルチェンジ!」
エレナはそう叫ぶとスマホの画面にパラレルと書かれた文字をなぞる。

するとエレナの全身が光に包まれ、髪が腰まで伸び随所にフリルが施されたワンピース調のピンクのコスチュームに身を包む。
そしてエレナはパラレルガールに変身した。

パラレルガールはすぐさま和也と真司にヒーリングを施す。

「ん・・・雷慈と君は?」
二人は意識を取り戻し、パラレルガールに名前を聞く。
「説明は後、今は通り魔を追うのが先よ。」
「でもどうやって?」
雷慈は首を傾げる。
「私は和也を背負うから雷慈は真司を背負って。」
パラレルガールの言葉に雷慈は驚きを隠せない。
「そんな無茶だよ。人を背負ってバイクを追うなんて。」

「そんな事はないわ。雷慈もさっきの私と同じ事をやれば変身出来るから。」
パラレルガールにスマホを手渡され、雷慈もやると全身が白いボディスーツに変化し、パラレルボーイに変身した。

「今なら速く走れるわ。」
そう言うとパラレルガールは和也を背負った状態で走り始めた。その速さは目にも止まらない程だった。
パラレルボーイもパラレルガールを追って走り始めた。
(凄い、なんて速さなんだ。これがパラレルワールドの力か。)
そう思いながらパラレルガールに追いついた。

一方通り魔の男は余裕で逃走を続けていた。
「へっ余裕余裕っ。中学生がこの俺なんかに敵う訳ねぇからよぉ〜!さーて、これだけでは俺の心は満たされねえからもうひと暴れするか。」
通り魔はそう言うと道端の公園で止まった。

その頃公園では子供達が遊んでいた。公園は子供達で賑やかだったが・・・
「てめえら皆殺しだ!!」
突如現れた通り魔に子供達はパニックになり、一斉に悲鳴が響き渡った。
「わーん!怖いよぉーっ!!」
「うるせぇ!みんなくたばれ!!」
通り魔は子供達に鎌を振りかざす。
「皆殺しだぁぁぁぁ!!!」
絶体絶命の瞬間(とき)だった。

「ぐはぁっ」
通り魔は強烈なキックを喰らいその場に倒れた。
「もう逃げられねえぞ通り魔め!」
「子供に危害を加えるなんて人間じゃないわ!」
駆けつけたパラレルコンビによって通り魔は追い詰められたのだった。
「みんなは公園から逃げて。」
二人は子供達と和也&真司に呼びかける。

一同が避難したのを確認するとパラレルガールは一斉に攻撃を仕掛ける。
「たああああっ!!」
パラレルガールのパンチが通り魔に命中した。

(すっ凄い。これがパラレルワールドの力なのか?)
パラレルボーイはパラレルワールドの力に驚いた。

「何やってんの!パラレルボーイも早く。」
パラレルボーイも通り魔に攻撃を仕掛けた。
パラレルコンビの猛攻に通り魔は為すすべもなくその場に倒れた。

「やったな」
「うん」
パラレルコンビは安堵の表情を浮かべ、和也と真司はただ唖然としていた。しかし

「これでやられたと思うなあぁーっ!!」
何と通り魔は再び起き上がり、鎌を振りかざして来たのだ。

追い詰められる二人、するとパラレルガールは右手を白く光らせた。
「パラレルボーイも全身に力を込めて。」
パラレルボーイは言われるがまま力を込めると同じように右手が白く光った。
「今よ!」
パラレルガールの合図で二人は右手から破壊光線を放出する。

「パラレルッアルティメットエクスプロージョン!!」

ドッゴォーン!!

破壊光線は通り魔に命中して倒れ、そのまま動けなくなった。そして通り魔は駆けつけたパラレルパトロールによって捕らえられた。

翌日、新聞には前日の事が一面トップで掲載され、こう書かれていた。
[パラレルコンビの連携プレイで見事お手柄]

そして雷慈はエレナに昨日の事を話した。
「そういや昨日のような事ってよくあったりするのか?」
「パラレルワールドの世界を行き来出来るようになってからは時々あるみたいよ。だけど私達がいる限りこの町の平和は絶対守り抜いて見せるわ!」
「私達って俺も一緒に戦うの?」
「ええそうよ。私達と一緒に町の平和を守ろうねっ。」
「うあぁ・・・」
エレナの言葉に雷慈はがっくりしたのであった。

終わり

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